「振込データは全銀形式でアップロードしてください」——銀行の窓口や総合振込の設定画面でそう言われて、 CSVをどう変換すればいいのか分からず固まった経験はないでしょうか。 全銀フォーマットは項目ごとのバイト数が厳密に決まった固定長のテキスト形式で、 Excelで手作業で整えようとすると桁がずれてエラーになりがちです。 この記事では全銀フォーマットの仕様と、経理担当者がつまずきやすい半角カナ変換のルールを解説します。
全銀フォーマットとは何か
全銀フォーマットとは、全国銀行協会(全銀協)が定めた「総合振込」用データ伝送の標準規格です。 法人向けインターネットバンキングの一括振込機能から、銀行のオンラインバンキングシステムへ 振込データを渡すために使われる固定長のテキスト形式で、多くの銀行のファイル伝送サービスが対応しています。
ファイル全体は次の4種類のレコード(行)で構成されます。種類を問わず、各レコードはすべて120バイト固定です。
| レコード種別 | 内容 | 件数 |
|---|---|---|
| ヘッダーレコード | 委託者(振込元)の情報 | 1件 |
| データレコード | 振込先ごとの明細 | 振込件数分 |
| トレーラレコード | 合計件数・合計金額 | 1件 |
| エンドレコード | ファイルの終端を示す合図 | 1件 |
たとえば振込先が50件あるファイルなら、ヘッダー1行+データ50行+トレーラ1行+エンドレコード1行の 合計53行、120バイト×53=6,360バイトのテキストファイルになります。
なぜ固定長なのか — 桁がずれると即エラーになる仕様
CSVはカンマで項目を区切りますが、全銀フォーマットには区切り文字が一切ありません。 かわりに「被仕向銀行番号は先頭から5バイト目から4バイト」「受取人名は45バイト目から30バイト」というように、 各項目の開始位置とバイト数があらかじめ決まっています。 銀行のオンラインバンキングシステムはこの位置情報だけを頼りに1行をパースするため、 1バイトでもずれると口座番号が受取人名の欄にはみ出すといった致命的なエラーになります。
数字項目は右詰めでゼロ埋め、カナ項目は左詰めでスペース埋めという整形ルールも決まっています。 たとえば口座番号「12345」のような5桁の番号は「0012345」のように先頭を0で埋めて7バイトに揃えます。 データレコードの主な項目とバイト数は次のとおりです。
| 項目 | バイト数 | 整形ルール |
|---|---|---|
| 被仕向銀行番号 | 4 | 数字・右詰めゼロ埋め |
| 被仕向銀行名 | 15 | 半角カナ・左詰めスペース埋め |
| 被仕向支店番号 | 3 | 数字・右詰めゼロ埋め |
| 被仕向支店名 | 15 | 半角カナ・左詰めスペース埋め |
| 預金種目 | 1 | 1:普通 2:当座 4:貯蓄 |
| 口座番号 | 7 | 数字・右詰めゼロ埋め |
| 受取人名 | 30 | 半角カナ・左詰めスペース埋め |
| 振込金額 | 10 | 数字・右詰めゼロ埋め |
残りのバイトは新規コード・顧客番号・予備領域など銀行システム側が使う項目で埋まっており、 主な項目とあわせて1レコードちょうど120バイトになるよう設計されています。
半角カナ変換が必須な理由
全銀フォーマットの受取人名・銀行名・支店名・委託者名は、すべて JIS規格(日本産業規格)で定められた半角カタカナで記述するというルールがあります。 全角カタカナ・ひらがな・漢字はそのままでは使えません。半角カナへの変換には次のような細かいルールがあります。
| 変換前 | 変換後 | 補足 |
|---|---|---|
| ひらがな「やまだ」 | ヤマダ | 内部で全角カタカナに変換したのち半角化 |
| 濁音「ガ」 | ガ(2文字扱い) | 清音+濁点の2バイトになる |
| 半濁音「パ」 | パ(2文字扱い) | 半濁点も同様に1バイト追加される |
| 全角英数字「ABC123」 | ABC123 | 全角記号も半角に変換される |
| 漢字「山田太郎」 | (半角スペース) | 変換不可のため事前にカナ表記へ直す必要がある |
注意したいのは濁音・半濁音です。「ガ」は全角では1文字ですが、半角カナでは清音の「カ」と濁点の「゙」の 2文字分(2バイト)を消費します。30バイトの受取人名欄に濁音を含む名前を詰め込む場合、 見た目の文字数以上にバイト数を消費する点に注意してください。
漢字を含む名義(法人名など)はそのままでは変換できません。事前にカタカナ表記に直しておかないと、 変換ツール側でスペースに置き換えられ、振込先名義の欄が空欄同然になってしまいます。
経理担当者が全銀フォーマットを使う場面
全銀フォーマットが必要になるのは、主に次のような場面です。
- 毎月の給与・賞与を従業員複数名へ一斉振込するとき
- 複数の取引先への請求書支払いをまとめて処理するとき
- 会計ソフトに全銀フォーマット出力機能がない、または追加費用がかかる場合
いずれも振込先が数十〜数百件規模になることが多く、Excelで1件ずつ手作業のまま 固定長データを組み立てるのは現実的ではありません。
CSVを全銀フォーマットに変換する手順
手作業のバイト数計算を避けるなら、CSVから自動生成するのが確実です。全銀フォーマット振込データ作成ツールを使うと、次の手順でブラウザ上だけで変換が完了します。
- 振込先データをCSV形式で準備する:「銀行番号,銀行名,支店番号,支店名,預金種目,口座番号,受取人名,金額」の8列でCSVを用意します。列の順番は固定のため、Excelで作成する場合は列がずれていないか確認してください。
- 全銀フォーマット振込データ作成ツールに依頼人情報を入力する:委託者コード・委託者名・取組日・仕向銀行(自社が振込に使う銀行・支店・口座番号)を入力します。銀行との契約書類や法人向けインターネットバンキングの管理画面で確認できます。
- CSVをアップロードしてプレビューを確認する:用意したCSVをドロップ、またはテキスト貼り付けで読み込ませます。銀行番号・受取人名・金額がプレビューに正しく表示されているか確認してください。
- 「全銀フォーマットを生成する」をクリックしてダウンロードする:生成ボタンを押すと、半角カナ変換・固定長への整形が自動で行われます。警告が表示された場合は変換できなかった文字がないか確認したうえで、.txtファイルをダウンロードします。
- 銀行のファイル伝送サービス(総合振込)にアップロードする:法人向けインターネットバンキングの総合振込メニューから、ダウンロードした全銀フォーマットファイルをアップロードします。銀行側の画面でも件数・合計金額が一致しているか必ず確認してください。
ブラウザ完結だから安心して使える
振込データには口座番号・氏名・金額という機密性の高い情報が含まれます。全銀フォーマット振込データ作成ツールはCSVの読み込みから固定長テキストの生成まですべてブラウザ内で処理しており、外部サーバーへの送信は一切行われません。 「経理データを外部サービスに預けたくない」という企業にとって、ブラウザ完結の処理は大きなメリットです。
銀行明細CSV変換ツールとの違い
似た名前のツールに銀行明細CSV変換ツールがあります。用途はまったく逆で、こちらは銀行からダウンロードした入出金明細CSVを freee・マネーフォワードなどの会計ソフトに取り込める形式に変換するツールです。 全銀フォーマット振込データ作成ツールは、これから振り込む先のリストを銀行に渡すための固定長データを作るツールです。
| ツール | 入力 | 出力 | 用途 |
|---|---|---|---|
| 全銀フォーマット振込データ作成 | 振込先CSV(自作) | 全銀フォーマット.txt | これから振り込むデータを銀行に渡す |
| 銀行明細CSV変換 | 銀行の入出金明細CSV | freee/マネーフォワード用CSV | 過去の入出金を会計ソフトに記帳する |
つまずきやすいポイントと対処法
| 症状 | 原因 | 対処法 |
|---|---|---|
| 受取人名がスペースになる | 漢字を変換しようとした | 事前にカタカナ表記へ直すか、CSV列編集ツールで列を整える |
| CSVを読み込むと文字化けする | Shift_JIS / UTF-8の不一致 | ツールは自動判別に対応。うまくいかない場合はCSV文字コード変換ツールで事前に変換 |
| 文字数超過の警告が出る | 支店名・受取人名などが長すぎる | 正式な略称・短縮表記に直す(自動で切り詰められるが要確認) |
| 金額が想定と違う | 金額列にカンマ・円マークが混在 | ツールは自動で除去するが、手動作成時は数字のみに整形する |
まとめ
- 全銀フォーマットは全銀協が定めた固定長(120バイト)の振込データ伝送規格
- ヘッダー・データ・トレーラ・エンドの4種類のレコードで構成される
- 各項目のバイト数が厳密に決まっており、桁がずれると振込エラーの原因になる
- 受取人名・銀行名・支店名は半角カナ必須。濁音・半濁音は2バイト分になる点に注意
- 全銀フォーマット振込データ作成ツールならCSVから自動生成でき、ブラウザ完結で機密データも安全
- 実際の振込前には必ず銀行のオンラインバンキング画面で件数・合計金額を確認すること